コラム「アート×語学の読書案内」森 敦子

メルマガ「イタリア文化講座」連載記事のバックナンバーです。

コラム「アート×語学の読書案内」森 敦子

メルマガ「イタリア文化講座」に連載中の「アート×語学の読書案内」バックナンバーです。
料理、音楽、美術、ファッションを切り口に、知的好奇心をくすぐる一冊をゆる~く紹介します。
お好きなタイトルからお楽しみください。
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コラム「アート×語学の読書案内」森 敦子
『フレスコ画への招待』 大野彩

水彩画は、皆さん小学校で描いたことがあるはず。
油絵はどうでしょう。私は高校の美術の授業で経験しました。
翌週の授業でどんどん重ねて描いていけるのが、とても楽しかったことを覚えています。

では、フレスコ画は?
イタリア好き・美術好きなら、知識はあると思いますが、実際に描いたことのある人はほとんどいないのではないでしょうか。

それも当然。
フレスコ画というのは、壁に塗られた生乾きの漆喰の上に絵を描いていく技法。
なかなか試せるものではありません。
この本では、ご本人もフレスコ画のアーティストであり、また研究者でもある大野彩さんが、 フレスコ画の技法と作品(イタリア、ルーマニア、日本など)の魅力について解説してくれます。
技法を知ってから作品を鑑賞すると、また面白さも数倍。

「そうか~、ここから青の色味が変わっているのは、別の日に描いたからなのか~」
「そうか~、実験を重ねるタイプのダ・ヴィンチは、早描き必須・修正不可のフレスコ画は嫌いだったのか~」

画家の思考や生活を、よりはっきりと想像できたような気がします。

語学視点でみても、興味深い話がいろいろ。

「なるほど~、壁に塗る下地の薬は、イタリア語でmalta。
 日本語の「モルタル」ね。へえ~。
 でもセメントモルタルとは違うから、フレスコ画のときは「マルタ」と訳す。なるほど。
 いつか翻訳で使う時のために(いつだよ)、メモメモ!」

「なんと!フレスコ画を壁からはがして別の面に移動させる方法があるとな!
 その名も『ストラッポ』!動詞strappare「剥ぎ取る」からね~。ほほ~」

と、「なるほど」がたっぷりの一冊でした。

技法を知ると、絵画鑑賞ももっと楽しくなるんですね。
次は、モザイク画かテンペラ画について読んでみたいな。

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コラム「アート×語学の読書案内」森 敦子
『名画の謎 ギリシャ神話篇』 中野京子 文春文庫

イタリア語やフランス語に携わる仕事をしていてナンですが、
カタカナの人物名を覚えるのが苦手です……。
おかげで世界史のテストではかなり苦労しました。

ギリシャ神話もまたしかり。

ただ、そのせいで実は、何度読んでも新しい話のように感じられて
意外と楽しんでしまっています(それでいいのでしょうか)。

そんなわけで、「ギリシャ神話 ダイジェスト」のような本は大好きで、何冊も持っています。

お気に入りは、「怖い絵」シリーズで有名な中野京子先生の
『名画の謎 ギリシャ神話篇』 (文春文庫)

第1章2枚目、ティントレットの『天の川の起源』についての解説は、
満員電車でニヤニヤを止められなくなるほど面白かったです。



描かれているのは、ゼウスが愛人に産ませた赤子に、正妻ヘラの乳を吸わせようとする場面。
ヘラの飛び散った母乳が天の川になったと、
そしてその赤子が後の英雄ヘラクレスだと、そういったお話です。

この解説を聞いて絵を見るだけでも面白いのに、中野先生の遊び心はもう一歩先を行きます。

先生曰く、ルーベンスが当時の人々にとってハリウッド的な魅力を持っていたのに対し、
ティントレットは漫画的に楽しまれていたのではないかと。
そこで、この絵に吹き出しをつけたらどうなるか想像してみるのですが……。

その面白さはぜひ実際に本を読んで味わっていただけたらと思います。

「1枚の絵を見る時に、これだけの知識と想像力があれば、どれだけ楽しめるだろうか」と、
そう思わずにはいられなくなる中野京子先生の本の大ファンであります。

まずは登場人物の名前を覚えるところから、ですね。

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コラム「アート×語学の読書案内」森 敦子
『バール、コーヒー、イタリア人』 島村菜津

学生時代に、(日本の)バールでバリスタのアルバイトをしていたので、エスプレッソには特別な愛着があります。

コーヒーの楽しみ方は人それぞれだと知りながらも、内心、エスプレッソはイタリア人がするように砂糖をドサドサといれて、がやがやした店で立ち飲みするのが最高だと思っています。
しかも実は、エスプレッソこそが正しいコーヒーの味わい方だとすら思っています。

もはや思い込み以外の何物でもないと自覚しながらも、そういう気持ちを捨てられずにいます。

そんな私とは違い、データをもとに、論理的にエスプレッソについて解説するのがこの本です。
例えば、バールの店舗数なんかもしっかりとデータで出ています。

イタリアのバールってやたらと多いと思いませんか?
この本によればイタリアにあるバールは、155,609店舗(2006年データ)。
これって実は驚異的な数字なんです。

この数字だと、バールはだいたいイタリア人400人に対して1軒。
一方、日本のコンビニは、約50,000店舗といわれています。
つまり、ざっと日本人2400人対して1軒。

そう、実は、人口比でみると、バールは日本のコンビニの6倍あるんです。

みなさんの家の周りを見回してください。
あっちにコンビニ、こっちにコンビニ、そのまた向かいにコンビニです。
都会の真ん中にコンビニ、田舎の集落にコンビニ、病院やオフィスビルの中にまでコンビニ。

それよりも多いイタリアのバール。
しかも、そのほとんどが個人経営。

なぜこんなに多いのか。
どうしてそれで商売が成り立つのか。
どうして大手企業が参入しないのか……。

そんな様々な疑問をこの本が解消してくれます。
淹れ方というよりカルチャーについての一冊です。

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